学校からの帰り道、木吉先輩と二人でコンビニに寄って、ココアを買った。今日の部活はお休みだったから、空はまだ明るく、優しい水色とオレンジ。隣を歩きながら茶色いパックに ストローを通す木吉先輩の手元を眺めて、私はふと首を傾げた。

 「木吉先輩のココア、小さくないですか?」

 「え?」

 木吉先輩はそのココアと似た色の目でぱちぱちと瞬くと、てのひらに収まったパックをじっと見つめた。

 「そうなのか? しまった、気づかなかったな」

 「おかしいですね、これって小パックなんてありましたっけ?」

 二人で首を傾げつつ、お互いの手に持ったパックを並べてみる。木吉先輩のはストローが刺さっていて、私のはまだ買ったときのままの格好。でもその大きさは二つ一緒で、何も 違わなかった。

 「あれ? 一緒だ」

 「一緒だな」

 「さっきは小さく見えたんですけど……」

 「ん、ああ。わかった」

 ココアを持っていない方の木吉先輩の手が、不意に私の手に触れた。私の方はまだ持ったままだったココアごとほとんどすっぽり包み込んで、木吉先輩はなぜか嬉しそうに笑った。

 「の手が小さいんだよ」

 温まるつもりで買ったココアだったけど、もうそのお役目は間に合ってしまった。