※キセキの世代で席順小ネタ詰め込み。not逆ハ。一部席替え関係ないものもあり。台詞多し。











隣の席の黒子君

 隣の席の黒子くんは、隣にいるけどあまり存在感がありません。だから私はついつい気を緩めてしまって、よく居眠りをするのです。

 「……さん、さん」

 「んー……んう? ……あ、黒子くん」

 「次、当たりますよ」

 「え? ……わっ、ほんとだ、あ、ありがとう……!」

 「どういたしまして」

 「いつもいつもごめんね、黒子くん……」

 「いいえ。可愛らしい寝顔なので、起こすのは忍びないですが」

 さらっと言って、黒子くんは黒板に向き直ります。私は顔がとても熱くなります。
 それから後は、おちおち寝てもいられません。





前の席の青峰君

 青峰くんはよく授業をさぼる。桃井ちゃんによると、屋上で寝ているらしい。典型的である。たまに出てきたかと思えば、席についてやっぱり寝ている。ひとつ後ろの私は、 机にへばりついた彼の背中しか見たことがない気がする。

 「すーすー」

 「(寝息すごい)」

 「すーすー」

 「(爆睡だなあ)」

 「すーすー」

 「(寝不足なのかな)」

 「んむ」

 「(向き変えた)」

 「すーすー」

 「(更に寝る)」

 「すーすー」

 「(次当たるかもよ)」

 「すーすー」

 「(起きないかなあ)」

 「すーすー」

 「(起きてー)」

 「すーすー」

 「(おーい)」

 「すーすー」

 「(青峰くーん)」


 「んあ?」

 「わあ!?」

 いきなり青峰くんが起き上がった。思わず悲鳴を上げてしまった。青峰くんは眠気まなこで振り返る。

 「わあってお前……」

 「ご、ごめんなさい」

 「はは、変なやつ」

 意外なくらいに、にかっと笑って、また寝てしまった。
 びっくりした。

※寝ぼけている





後ろの席の紫原君

 紫原くんは飛び抜けて背が高い。黒板に近い席なんかに座ると、授業中、いろんなところから苦情が飛ぶ。だから席替えのときは、だいたい後ろの方に回ってもらっている。

 「あーあ、めんどくさいなあ」

 「背が高くても大変だね」

 「うん、いろんなとこで頭ぶつけるよ」

 「痛そう」

 「ちんはそーいう悩みないだろーね」

 「うん、まあ」

 「いーなー。小さくて。逆に大変そうだけど」

 「え、ちょ、うるさいな」

 「でも今回の席替えはよかったかも」

 「聞けよ」

 「ちんの後ろだし」

 「は」

 「毎日ちょっかいかけるけど、いいー?」

 「え、え」

 焦る私の頭に、紫原くんは大きな手を乗せてにやっとした。





斜め前の席の赤司君

 席替えをして、赤司くんが斜め前に来た。以前よりはずっと近くなったし、授業中にも彼の姿を眺めていられるから、私としてはベストなポジションだ。けど、少しだけ問題が。 この位置関係、これといって接点を持てない。隣じゃないから日直は被らないし、どちらかが教科書を忘れてごめん見せてなドキドキハプニングも望めないし、しかも班分けでは 恐らく別々のところに振り分けられてしまう。なんてこった。これじゃひたすら見つめるのと、消しカス投げるくらいしかできないではないか。

 「

 「はいっ!?」

 「それ実行したら殺すよ」

 こっちを見もせず、赤司くんは言った。
 なぜばれたし。こわすぎて死ぬかと思った。





もっかい隣の席の桃井ちゃん

 帰りのHRで、月いちの席替えをした。眼鏡の委員長が、くじ引きの入った箱をみんなに回していく。私は少しだけ憂うつだ。

 「さつきちゃんと離れちゃったらやだなあ」

 「私もだよ、ちゃん。せめて一緒の班ならいいのにねー」

 「ねー。う、くじ回ってきた」

 私とさつきちゃんは、箱に手を突っ込んで恐る恐るくじを引く。全員引き終わったのを確認すると、委員長は黒板に席順の図を書いた。そこに数字を入れていく。クラスみんなの ざわめきの中、新しい席が発表された。

 「ちゃん、どうだった?」

 「じゅ、10番」

 「私は5番。……あ、隣じゃないっ?」

 「えっ! ……あ、ほんとだー!」

 「やったあ! またよろしくね、ちゃん!」

 「こちらこそよろしくね、さつきちゃん! わあーい嬉しいよー!」

 「私もー! おいでちゃーん!」

 「さつきちゃーん!」

 ぎゅうぎゅうする私たちの後ろで、同じ班になった青峰くんと桜井くんが呟いた。

 「きゃーきゃーうるせーよてめーら……」

 「女の子らしくていいと思いますよ? ……あっ、すみません!」





いつつ前の席の黄瀬君

 黄瀬くんは叫んだ。

 「っちー!!」

 行儀悪く後ろ向きで椅子に座り、悲痛な面持ちで手を伸ばす。私はその先で、無表情のままきちんと席につく。2人の間には、各々に引いた顔をした生徒が4人座っていた。

 「センセイ! これなんかの陰謀じゃないスか!? っちとオレがこんなに離れちゃうなんて! しかもオレが前でっちが後ろ! これじゃ授業中のっちを見つめ らんないじゃないスか!! 得意科目でちょっぴりいきいきしてるっちとか苦手科目にも真剣なっちとかお昼の後でちょっとだけ眠そうなっちとかたまにノートの 端っこに落書きしてるっちとかもうほんと何もかもまじかわいーんスよ!? オレほとんどそんなっちだけを楽しみに授業受けてんのに! それを見逃せなんて信じらんない っス! せめてもうちょっと近くに! 隣とかじゃなくても視界に入るところに! それがダメならせめてこのっちの写真を黒板に貼って、」

 「黄瀬くん、それ以上喋ったら絶交」

 黄瀬くんは黙った。

※写真を黒板に→『HIGH SCORE』の京介案





斜め後ろの席の緑間君

 「おい、

 斜め後ろからかかった声に、私はうんざりを顔に書いて振り向いた。

 「はいはい今日は何をご所望ですか」

 「その筆箱についているカエルのストラップ、それを寄越すのだよ」

 「えー、買ったばっかなのになー。放課後には返してね」

 「明日にしろ。今日1日は必要だ」

 「わがままー。もう、毎日後ろからラッキーアイテムたからないでよ」

 「持っているお前が悪いのだよ。しかも、お前の席はここからよく目につく」

 「いやーん見ないでー」

 「ぎゃっはは、だってさ真ちゃん! 残念だったなーかまってほしいだけなのになー」

 「黙るのだよ高尾! そんなことは断じてない!」

 後ろでぎゃーぎゃーやり始めた2人を、頬杖をつきつつ眺めた。
 ツンデレということでいいのだろうか。





Main Title / 魔女のおはなし
「あるようでないベタな展開」から拝借