コンビニの袋を片手に提げ、のそのそと歩く紫原。その姿を遠くから眺めて、はわずかに首を傾げた。


 「紫原くん」

 「あー、ちんいた。お菓子食べよー」

 「うん」

 隣に並んで、廊下を歩く。昼休みの賑わしさの中で、上履きが床を食む音もふたつ並んだ。はぐっと顎を上げ、紫原を見上げた。その横顔はいつものとおりに 眠そうで、どこを見ているのかいまいちわからない。は先ほどふと感じたことを口にした。

 「紫原くん、最近ちょっと猫背?」

 「えー、何いきなり」

 「さっきそんな気がしたんだけどね」

 「んー……? そーなのかな。別に元から背筋ぴーんなわけじゃないけど」

 「姿勢は大事だよ。紫原くんスポーツやってるし」

 「かんけーあんの?」

 「あるんじゃないかな。もしかして最近勉強家?」

 「んなわけないじゃん」

 「ゲームのやりすぎ?」

 「疲れるから苦手」

 「そっか、そうだったね。んー、何でかなあ」

 「何でだろうねー」

 聞いているのかいないのか微妙なラインの相槌を、紫原はのったりと返す。それを特に気にする様子もなく、は頭をひねり続ける。そんな彼女のつむじを上から眺め、 紫原はふと立ち止まった。

 「あ、もしかして」

 「え?」

 先を行こうとしたの袖を軽く引っ張る。つられて振り返ったその額に、かなり屈んでキスをした。
 少しの間を置いて、は茹でダコになった。紫原は口角を緩く上げる。

 「最近よくこーゆーこと、するからかも」

 「ち…………小さくて悪かったね!」

 どこからか、リア充爆発しろと野次が飛んだ。





僕が猫になる理由