gdgdafternoon,


 秋の初めのお昼休み。温かい日差しに、涼しい風が優しく頬に降り注ぐ。校舎の屋上から見上げた空は、遮るものが何もない。澄んだ青い空に、のんびりと流れる羊雲の白さが まぶしい。心までつられてしまいそうに晴れやかな空を、しかし私は途方に暮れて眺めた。
 背中から張り付いて私の体を温めるのは、日光ではなく人の体温。性格が子供だから、平熱もそうなのかもしれない。紫原くんが、後ろから私の体を、すっぽりと腕の中に収めていた。
 私は彼の脚の間に据え置かれたまま身動き取れず、食べかけのお弁当をただ掲げ持つ。これじゃあ残りを食べられない。

 「む、紫原くん、離して」

 「んんー……」

 「……氷室先輩、助けてください」

 「うん? ああ。敦、離してやれよ」

 氷室先輩はお昼のパンをかじる片手間に、どこかとぼけたような顔で言った。真剣に手を貸してくれる気はないらしい。
 私は自分の眉が八の字になるのを感じながら、視界の端に映る紫原くんの頭に向かって再度懇願した。

 「お願い、離してー」

 「……やだー」

 「私まだお弁当残ってるんだよ」

 「食べればいーじゃん」

 「食べにくいんです……」

 ううん、と子供がむずかるような唸り声が聞こえて、ふっと肩口にかかっていた重みが消えた。紫原くんが、私の肩に預けていた頭をようやく上げてくれたらしい。 私はほっと息をつく。
 しかし、紫原くんはそれ以上動こうとしなかった。

 「……あの、紫原くん?」

 「ちんの抱き心地が良すぎるのが悪いんだしー……おやすみ」

 どすん、と肩にまた何かが乗っかる衝撃。やがてすぐ傍で聞こえ始めた寝息。紫原くんは今度こそ本気で寝てしまった。
 私は抱き枕じゃありません。