「…」

ソファに座る俺、その上にまたがる彼女。
それだけだったら色っぽい話にでも発展するんだろうけど、生憎目の前の彼女は俺より首の飾りに夢中らしい。
先程からチャリチャリと金属が交わる音が聴こえる。

いつだったか話した俺のアメリカでの事。別に隠す必要も重く話をする必要も全く無い、それ以上もそれ以下もない思い出。
だってきちんと理解してくれているだろうけど、感情は理屈では動かせないらしい。

「…わたし、強いよ。独占欲」

それだけ言うと行き場のなくなった腕は俺の背中に回される。
溜息なのか何なのか、はぁ、と首筋に吐息がかかる。
首にあたっているの顔はきっとふくれているのだろう。
想像できる自分もそれすら愛おしいと感じる自分もどうかしている。


…浅はかなのかもしれないが、不安があるのなら、包み込んで愛してしまえばいい。
それさえ塗り替えてしまえば、何の問題も無い。

「…そうだね」

頭に触れていない、俺との指を絡ませて呟いた。



全て、を





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