シャツの下で一瞬光ったそれに、は目を奪われた。
隣に座る氷室は、先程からノートに何かを書き込んでいる。一番窓際の席で、秋の淡い日差しにその姿は縁取られて見える。ペンを滑らせるごとに、少しだけ体も揺れる。
その動きに合わせ、光もわずかに揺らめいた。
「氷室君、それ」
「うん?」
の声に、氷室は顔を上げる。は光に視線を注いだまま、自分の首元を指で示した。氷室は軽く首を傾げ、それに倣う。すぐに、ああ、と頷いた。
「これか?」
襟元から取り出して見せたのは、鎖に通された指輪だった。古いものなのだろう。少しだけくすんだシルバーが氷室の指先で光る。輪は細く、その指に通せそうではなかった。
「氷室君もアクセサリーとかつけるんだ」
「うーん、少し違うかな。これはいつも身につけてるけど」
「そうなの?」
「大事な人との思い出だからね」
は黙り込んだ。机の上に置いていた両手を、無意識に握り込む。まばたきもせず、氷室の首元で揺れる光を食い入るように見つめる。
そのの様子をしばらく眺め、氷室は目を細めた。
「さんにもつけてあげようか」
「……え?」
「これ」
氷室が示したのは鎖だった。指に引っかけ、硬く小さく、冷たい音を鳴らす。
は目を見開き、勢いよく立ち上がった。そのまま氷室には一瞥もくれず、休み時間の喧騒にとけるように教室を出ていった。
が消えた戸口の方を見つめ、氷室は微笑んだ。首元では鈍いシルバーが光る。
廊下を歩きながら、は首に手をやった。きつく唇を噛む。その目元は泣き腫らしたように赤かった。
首には鎖
Title / hakusei
ひととせの夏から拝借