「ハッピーハロウィン! ちゃん!」
ウエルカムをするように、とびっきりの笑顔で両手を広げた桃井に、は胸が熱くなりました。
ピンクと水色であしらわれたミニスカートの衣装。それとお揃いのとんがり帽子。先端がぐるぐると渦を巻いた魔法のステッキに、ロングブーツ。そしてある意味凶器とも言える、
抜群のプロポーションをそのコスチュームで包んだ桃井は、絵に描いた、と言うよりむしろ画面から飛び出したような、理想のブラックマジシャンガ○ルでした。某カードバトル漫画
参照。
「ついに、このときが来たのか……!」
「え? どうしたのちゃん」
「2次元と3次元の間に立ち塞がる越えられない壁が、とうとう打ち壊される日が……!」
「もー、またそんなこと言ってるー」
「ごめん、自重するね」
は握りこぶしを解いて真顔に戻り、ぺこりと頭を下げました。桃井は特に何も気にしていない風で、きゃらきゃらと笑います。天真爛漫とは、この笑顔のことを言うのでしょう。
はほんわかした気分になります。
しかし、この笑顔もバスケのこととなると一転。女のカン、なんて言ってしまう、秘密めいた妖艶なものになってしまうのですから、中学からの付き合いのは今でも、
そのギャップに驚いてしまうのです。まさに魔性、いいえ、魔女っ子です。それだけ、彼女のバスケに対する姿勢は一方ならぬものなのでしょう。
そして、それは彼らについても。の頭を、ふと懐かしの面々が過ります。
「それより、ちゃん可愛いね! 羽に、しっぽも! 小悪魔ちゃん?」
「ん、うーん、何だろう、よくわかんないけど。あは」
「すごーい」
「あ、いたた引っ張んないで、なんか生えてるからそれ」
「あ、ごめんね! このワンピースもすっごく似合ってる!」
「ありがとー。桃井ちゃんのコスには劣るけどね!」
「そんなことないよー……あ、コスといえば」
桃井は思い出したというように、ぽんと手を打ちます。は首を傾げて問います。
「向こうにね、帝光のみんなが集まってるんだ」
「え、うそ、ウワサをすれば」
「それがね、みんな変な格好しててー。あ、でもテツ君はすっごく可愛いの! おばけなの!」
「何それ気になる!」
「それでね、せっかくだからみんなでお菓子パーティーしようって、私が提案したんだけど。ちゃんも来てくれると嬉しいなって……」
「行く行く! お菓子!」
「やった、ありがとう!」
と桃井は手を取り合って喜びます。お菓子もそうですが、久々の面々が揃うということが、2人には何よりも嬉しいことでした。
野郎共のところへ行く前に、スーパーに寄って買い出しをすることにしました。今回は、ハロウィンにかこつけたパーティーですが。
いつかまた、みんなでバスケを。
その願いも、きっと叶うといいと、桃井の笑顔を見て、はそっと思うのでした。